シート防水の上にウレタン防水を重ね塗りできるかどうかは、一律には決まりません。既存の防水層がどれだけ傷んでいるか、内部に水分が残っていないか、下地に密着しているかで、可否は分かれます。
重ね塗りが向く状態と難しい状態の見分け方を軸に、施工手順や費用の目安、業者選びのポイントまで順にお伝えします。
目次
シート防水とウレタン防水の特徴
シート防水は、ゴムシートや塩化ビニルシートを既存の防水層の上に貼って仕上げる工法です。施工が比較的簡単で費用を抑えやすく、耐久性にも優れます。一方で、素材が硬く柔軟性に欠けるため、複雑な形状の屋上やベランダには不向きです。なお、シート防水どうしは重ね張りができません。劣化したシートの上に新しいシートを貼ることはできず、いったん撤去してから貼り直すのが基本です。
ただし、シートの上に液状のウレタンを塗り重ねる工事は、シートどうしの重ね張りとは別の話になります。両者を混同しないよう注意してください。
ウレタン防水は、液状の樹脂を塗って塗膜をつくる工法です。柔らかく伸び縮みする性質があり、あとから塗り重ねられる点が持ち味になります。工法は下地に直接塗る密着工法と、通気層を設ける通気緩衝工法の2種類に分かれます。
シート防水の上にウレタン防水を重ね塗りできる条件
シート防水の上にウレタン防水を重ね塗りできるかは、既存の防水層の状態しだいです。ウレタンには伸縮性があり、シートの動きに追従しながら密着性を保てます。健全なシートが下地であれば、塗り重ねても剥がれ落ちる心配はほとんどありません。反対に、シートの傷みや水分の残りが大きいと、上から塗り重ねても不具合を招きます。可否を分けるのは、劣化の程度・水分・密着・排水という下地側の条件です。施工できる状態の目安と、注意が必要な状態を分けて整理します。
施工できる状態の目安
重ね塗りに向くのは、既存のシートが下地としてまだ機能している状態です。表面に大きな劣化や破れがなく、防水層の内部や下地が乾いていることが前提です。水分が閉じ込められていなければ、ウレタンを塗り重ねても膨れが起きにくくなります。また、シートが下地にしっかり密着していることも欠かせません。浮きがなく、端部や立ち上がり、シールの打ち替え部分の傷みが軽ければ、上から塗り重ねる下地として使えます。
加えて、雨水がたまらずきちんと流れる排水状態も条件のひとつです。屋上やベランダに水が残りやすいと、塗膜の劣化を早める原因になります。
施工が難しい・注意が必要な状態
そのまま塗り重ねるのが難しいのは、シートに膨れや破れ、浮きが出ている状態です。傷んだシートを下地にすると、塗り重ねたウレタンも一緒に動き、剥がれや割れの起点になりやすくなります。また、防水層の内部や下地が水分を含んでいる場合も、慎重な判断が必要です。閉じ込められた水分は、あとから膨れとなって表面に現れ、仕上がりを損なう一因になります。
さらに、シートと下地の密着が足りないときも、見極めが必要です。無理に重ね塗りを進めると、あとで再施工が必要になり、費用がかさむ場合もあります。膨れや浮きが見られるときは、部分的な補修や、通気層を設ける工法への切り替えを検討しましょう。
重ね塗りの施工手順
重ね塗りは、いきなりウレタンを塗るのではなく、下地を整える工程から始まります。最初の現地調査では、シートの劣化具合や水分の有無を確かめ、施工できる状態かを見極めます。次の高圧洗浄で表面の汚れやほこりを落とし、密着を妨げる要素を取り除くのが目的です。洗浄後は、劣化や破損した箇所を補修し、下地を平らに整えます。そのうえで塗るプライマーは、ウレタンとの密着性を高める下ごしらえです。プライマーはシートの素材や状態に合ったものを選ぶ必要があり、選定を誤ると密着不良を招きます。
通気緩衝工法を選んだ場合は、通気緩衝シートを敷き、内部の水分や空気を逃がす層を設けます。下地が整った段階が、ウレタンを塗る本番です。1層目、2層目と塗り重ねて規定の厚みを確保し、最後にトップコートで表面を仕上げます。トップコートは、紫外線や雨から塗膜を守る役割を担います。
重ね塗りで注意したいリスクと対策
重ね塗りで起きやすい不具合の多くは、下地の状態に原因があります。防水層の内部に水分が残っていると、熱で膨張した水分が塗膜を押し上げ、膨れを起こします。膨れを防ぐには、施工前に下地を十分に乾かすか、水分を逃がせる通気緩衝工法が効果的です。既存シートの浮きや劣化を見落としたまま塗り重ねると、下地の動きに塗膜が追従できず、剥がれの起点になります。着工前の現地調査で傷みを洗い出し、必要な補修を済ませておくようにしてください。
仕上げに使うトップコートは、紫外線や雨の影響で少しずつ劣化します。塗膜そのものを守る役割があるため、定期的な塗り直しが必要です。塗り直しの目安は建物の環境で変わるので、施工業者に点検の時期を確認しておきましょう。
重ね塗りにかかる費用の目安
重ね塗りの費用は、選ぶ工法と下地の状態によって幅があります。既存のシートを撤去せずに上から仕上げられるため、撤去費や廃棄費がかかりません。張り替えより初期費用を抑えやすい点が、重ね塗りの利点です。工期を短くできるうえ、既存のシートと新しい塗膜で防水層が二重になり、耐久性が高まる効果も見込めます。
ここからは、工法別のおおまかな相場と、追加費用が発生しやすいケースを分けて紹介します。金額は一般的な目安として捉えてください。
工法別の費用相場
ウレタン防水の費用は、工法によって1㎡あたりの単価が変わります。下地に直接塗る密着工法は、1㎡あたりおよそ4,000〜6,000円が目安です。下地が良好で水分や浮きがない場合に向き、通気層をつくらないぶん費用を抑えやすい工法になります。通気層を設ける通気緩衝工法は、1㎡あたりおよそ5,000〜7,000円が相場です。密着工法より単価は上がりますが、築年数が経過した建物や、軽い浮きがある下地でも膨れを抑えやすくなります。
単価だけで比べず、下地の状態に合う工法かどうかで選ぶことが、結果として長持ちにつながります。
追加費用が発生しやすいケース
見積りの基本料金に加えて、下地や現場の状況しだいで追加の費用が発生する場合があります。傷みが大きく重ね塗りが難しいと判断されると、既存シートの撤去と処分の費用が必要です。また、下地のひび割れや欠損が広範囲に及ぶと、下地補修の費用も上乗せされます。排水口まわりが劣化していれば、排水口の改修費が別途必要です。
二階以上のベランダや屋上で工事する場合は、作業用の足場代も必要になります。見積りを受け取ったら、本体工事と付帯工事が分かれて記載されているかを確かめましょう。区分があいまいなままだと、あとで金額が膨らむ一因になるので注意が必要です。
後悔しない施工業者の選び方
重ね塗りの仕上がりは、業者のレベルに左右されます。まず確認したいのは、現地調査を丁寧に実施するかどうかです。シートの状態を細かく見ずに工事を進める業者だと、施工後の膨れや剥がれを招きかねません。また、工法を選んだ理由を、下地の状態と結びつけて説明できるかも判断材料になります。なぜ密着工法か、なぜ通気緩衝工法かを言葉にできる業者ほど、無理のない施工を組み立てられます。
料金は安さだけで選ばず、見積りの内訳まで比べるようにしてください。内訳が細かく開示された見積りほど、工事範囲と金額の根拠がはっきりします。施工実績が豊富で、工事後のアフターサービスや保証を用意している業者であれば、長く付き合ううえでも安心して任せられるでしょう。
まとめ
シート防水の上にウレタン防水を重ね塗りできるかどうかは、既存の防水層の状態で分かれます。シートに大きな劣化や浮きがなく、内部が乾いていて下地に密着していれば、塗り重ねる下地として使用可能です。膨れや破れ、水分の残りが見られる場合は、補修や工法の切り替えが欠かせません。可否を正しく判断するには、屋上やベランダの状態を専門家に直接見てもらうのがおすすめです。重ね塗りを検討しているなら、まずは施工業者に現地調査を依頼してみましょう。下地の状態と適した工法を確かめるところから始めてみてください。