
ウレタン防水は、住宅やビルの屋上、バルコニーなどで幅広く採用されている防水工法で、継ぎ目のない防水層を形成できますが、十分に乾燥させることが重要です。乾燥が不十分なまま次の工程に進むと、さまざまな不具合が生じる恐れがあります。この記事では、ウレタン防水の乾燥時間の目安や、知っておきたい基礎知識について解説します。
ウレタン防水材の乾燥時間の目安
ベランダや屋上、側溝といった建物の外部では、雨水や湿気の浸入を防ぐためにウレタン防水工事が広く実施されています。液状の樹脂材を塗布することで、下地に密着した防水層を形成できるのが特徴ですが、施工において非常に重要なのが「乾燥時間」です。塗布したウレタン防水材が十分に硬化する前に次の工程に進んでしまうと、仕上がりに大きな影響が出る恐れがあるため、施工前に目安を理解しておくことが欠かせません。
目安は20〜72時間程度
ウレタン防水材の乾燥時間は、一律に決められるものではありません。使用する製品の種類や配合成分、さらには気温や湿度、施工場所の日当たりなどの環境条件によって変動します。一般的には、塗布後に20〜72時間程度を見込んでおくとよいでしょう。夏場の気温が高い環境では乾燥が早まることもありますが、冬の低温時や湿度が高い日には、硬化が遅れる場合もあります。季節や施工現場の条件を踏まえて、柔軟に調整することが重要です。
工程ごとの詳細
ウレタン防水の施行は、大きく分けてプライマー塗布、中塗り1回目、中塗り2回目の3工程で完成します。プライマーは塗料の食いつきをよくする塗料であり、乾燥時間は3〜4時間ほどです。中塗り1回目塗布後には、1日ほど確保しておいたほうがいいでしょう。中塗り2回目でトップコートを塗布して完成です。さまざまな要因で乾燥時間は前後しますが、慎重に作業するなら全工程で3日間確保しておくことをおすすめします。
メーカー推奨時間をしっかりと守る
防水材メーカーが推奨する乾燥時間や、施工条件を確認することも非常に重要です。製品ごとに配合成分や性能が異なるため、必ずしも20〜72時間という目安だけで判断してよいわけではありません。施工前には、必ずメーカーの仕様書を確認し、現場の環境条件と照らし合わせて計画を立てることが、仕上がりを左右する大きなポイントです。
乾燥時間が足りない場合に起こりうる不具合
建物の屋上やベランダ、バルコニーなどで多く採用されるウレタン防水は、十分な乾燥を経ずに次の工程へ進んでしまうと、防水性能や仕上がりの美観に深刻な影響をおよぼしてしまいます。施工前に必ず押さえておきたいのが、適切な乾燥時間の確保と、それを守らなかった場合に起こる不具合です。仕上がりが悪くなる
乾燥時間を無視して施工を急いでしまうと、傷やへこみが発生しやすくなります。乾ききる前に次の作業に移ったことで、まだやわらかい層に負荷がかかり、後から表面がへこんだり傷が残ったりします。そのまま補修を怠ると、そこから水が回り込んでしまうなどで痛みやすくなり、防水層全体の劣化を早める原因となりかねません。よって、しっかりとした乾燥時間を確保してから、次の工程にうつる必要があるのです。一般的に、ウレタン防水材は、気温20℃前後であれば表面乾燥までに数時間、歩行が可能になるまでには半日から3日程度が必要とされています。完全に硬化して強度を発揮するには、気温や湿度の条件にもよりますが、72時間見込んでおくのが安心です。
メーカーによっても指定時間が異なるため、必ず製品ごとの仕様書にしたがいましょう。
べたつきが残る
ウレタン防水材はゴムのような弾力性と粘着性をもっているため、乾燥を待たずにトップコートの仕上げに進んでしまうと、空気中のゴミやほこりが付着しやすくなり、表面にべたつきが残ります。見た目が悪くなるだけではなく、防水層そのものの耐久性にも影響をおよぼします。硬化の遅れ
次に起こりやすいのが、硬化の遅れです。1層目が完全に乾かないうちに2層目を塗り重ねてしまうと、下の層が空気に触れられず、いつまでも硬化が進まないケースがあります。長い時間をかければ固まることもありますが、外見からは乾いたかどうかの判断がむずかしいため、施工後に不用意に歩行するとかんたんに傷を付けてしまうでしょう。
表面の崩れ
さらに注意すべきは、表面の崩れです。下地の層が未硬化のままだと、上に塗った層だけが先に固まってしまうことがあります。硬化の過程で溶剤は収縮をともなうため、上層部がしわ状になり、表面がぼろぼろになってしまいます。こうした状態になると、防水機能だけではなく美観も損なわれるので、早期の補修が必要です。